トラベル懇話会 Travel Management Club
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例会抄録
2011年 新春講演会
 
21世紀の日本〜とるべき進路
―文明の岐路に建つ世界と日本―
 
岸井成格氏
毎日新聞社主筆
 
封建体制の幕末から明治維新への大変革と、第2次世界大戦の敗戦から戦後の経済復興への激動。
これまでに2つの大転換期を経験してきた日本は、いま第3の転換期を迎えている。

“第3の建国”ともいうべき重要な時期を迎え、日本人はいま何を自覚し、何を目指すべきか。毎日新聞社主筆・岸井成格氏の新春講演では、数多くのヒントが語られた。
 
いま世界と日本で起きていること
われわれはいま明治維新、第2次世界大戦敗戦に次ぐ近代日本にとっての第3の大転換期を迎えています。同時に世界的な観点で見ても地球上の近代文明が行き詰まりつつあり、岐路に立たされています。物質的な豊かさや便利さの追求を疑わずに来た人類が、ここへきて環境問題に直面し意識の転換を求められています。
 日本社会の根本的な問題としては人口減少があります。社会的な影響が大きすぎることもあってか、表立ってあまり声高に語られることはないのですが、少子高齢化に伴う人口減少傾向は加速し、まもなく毎年1つの県がそっくり消えてなくなるくらいのペースで人口が減少する時代が始まります。現在の人口から、北海道と東北6県を合わせたほどの人口が消えてなくなってしまうのは、そう遠い将来のことではありません。大幅に人口が減少するなかで経済的、社会的な活力を維持するのは容易なことではありません。
 こうして考えてみると、日本はまさしく第3の国づくりに取り掛からなければなりません。国や社会のシステムもパラダイムも全く異なる新しい国づくりが求められています。明治維新では封建体制を脱して国力を強化し、当時の列強国家の仲間入りを果たすという目標を掲げました。そして実現するというある種の奇跡を起こしたわけです。われわれは再び奇跡を起こすくらいの覚悟が必要です。
きしい・しげただ●1944年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。67年毎日新聞社入社、熊本支局に配属。政治部、ワシントン特派員、編集委員、論説委員、社長室委員、政治部長、論説委員長などを歴任。役員待遇編集委員、特別編集員を経て現職。
 
現在の政治混乱の要因とは
日本が歴史的に重要な時期を迎えているにもかかわらず、政治は混乱しています。バブル崩壊以降の20年間は「失われた20年」と言われますが、政治の面でも同じです。この20年間に政権を担った総理大臣は16人にのぼります。しかも、そのうち5年半は小泉内閣だったわけですから、14年半で総理は15人だった計算です。これでは政治が混迷するのも無理はありません。現在の菅政権も、いつまでもつのかわかりません。
 こうした政治の混迷や経済の停滞が始まった20年前にいったい何があったのか。大きかったのは東西冷戦構造が変わったことです。冷戦の終焉によりアメリカが突出した力で世界秩序を担う立場になりました。そのアメリカ型グローバリゼーションが日本の政治を直撃したといえます。それまでは西側寄りの保守陣営と、旧ソ連・中国の東側寄りの革新勢力が対立し日本の政治も保守と革新に分かれて競い、多くの国民が保守の自民党を支持してきたわけです。
 ところが冷戦構造が変わり、東西イデオロギーの壁が低くなったことで保革対立構造が崩れ、政治の混迷・混乱が始まりました。いまから17年前には細川政権が発足し、保守・自民党と革新・社会党が2大政党として君臨する、いわゆる「55年体制」が終わりました。

 「55年体制」が終わる前兆として複数の崩壊がありました。ひとつはリクルート事件による竹下政権の崩壊です。竹下首相はリクルート事件の責任を問われ、予算と引き換えに首を差し出し退陣しました。そして2つ目が自民党後継体制の崩壊です。竹下政権を引き継ぐはずの自民党の有力者がいずれもリクルート事件への関与が疑われ首相の後継候補を決めあぐねたのです。結局、後継は宇野宗佑氏に委ねられることになりましたが、宇野総理も女性スキャンダルにより2カ月余りであっけなく退陣。こうした混乱を経て自民党内にも危機感が生まれます。
 自民党がいつサドンデスするかわからない。ならば政権担当能力を持った野党を育て2大政党制を日本に定着させるべきだ。こう考えた自民党幹部の尽力もあって小選挙区制が実現したのです。その小選挙区制度の導入により中選挙区は崩壊しました。小選挙区制では得票1位へ投票した者以外の民意が切り捨てられ国民の意見が必ずしも反映されないデメリットがあります。しかし、ともかく2大政党制を目指した小選挙区制が始まり、それから17年たって自民党から民主党への歴史的政権交代が実現したのです。これは日本の近代史において初の政権交代です。
 時代の転換点では旧権力と権威が力を失い、パラダイムシフトが起こりますが、政治の世界でもまさしく経済界を支持基盤とする自民党から、民主党に政権が移ったのは転換の時代を反映した現象ともいえます。
 
これから世界で起きること
これからの世界は、観光、環境、健康の3Kイノベ−ションが鍵を握ります。エネルギー革命と人口減少が同時進行するなかで3Kイノベーションの持つ力がどうしても必要になってきます。このイノベーションを促進するために、思い切った金融支援、産業振興政策をするという菅政権の3K重視は正しいと思います。観光、環境、健康の3つが連関して新しい革新が始まります。そうしたなかでは、たとえばグリーン・ツーリズムなども大変重要な取り組みになってきます。
 新たな産業革命がどこまで進むかは未知数です。しかし少なくとも化石燃料へ依存する社会から自然エネルギーを活用する社会へ転換する必要があります。そこに原子力発電や再生可能エネルギーの利用、バイオエネルギーなども組み合わせていかねばなりません。同時にスマート・グリッドも進める。今後は地域における動きの最大の注目はスマート・シティ作りになるでしょう。自然エネルギーで町のエネルギーをまかなうスマート・シティを実現することで、地域活性化にもつながるはずです。

 来年、世界中の大統領やトップが一斉に改選期を迎える2012年問題も忘れてはなりません。アメリカとロシアでいずれも大統領選挙がありますし、韓国、台湾でも国のトップを決める選挙があります。中国でも国家主席が交代すると見られます。北朝鮮でも権力移譲の動きがあります。日本を取り巻く国々で国のトップが代わる。つまり各国の政治が内向きになり強いトップを演出するわけです。日本は荒波を覚悟しなければならないでしょう。